IoTによって見える化レベルをとらえる
- 和賀南 村本
- 2022年10月16日
- 読了時間: 4分

中小企業の多くは、ITベンダーに自社のIT化を依頼するために、何を依頼の根拠にしたらよいかを考えたり、提案されるIT商品を吟味したりが難しい。とりあえず、生産管理部門や工場長が中心となって、他社事例を勉強して、IoTの導入にふみきることになりがちだ。この従来の方法でも、生産ラインや工場における生産性向上やコスト削減であれば問題はない。
しかし、IoTによる見える化となると、生産性向上やコスト削減という課題は、単なる製造現場ばかりの問題ではなく、業務現場でも喫緊の課題となっている。
経営課題としても新たなIT化をIoT導入の機会で考える場合、全社的な最適化が必要なため、部門横断的に目標をとらえる必要がある。今回は、部門横断的に目標をとらえるために、どのような観点に着目したらよいかを説明する。
生産管理・開発・営業のバランスの見える化
生産管理や開発現場ではISO9001や14001などを導入し、品質保証や環境に配慮した開発のマネジメントを行っている。これにより、IT化やIoT導入を考える上で、常日頃、どのラインのどのプロセスや作業にどのようなノウハウがあるのかを、ある程度見える化し続けている。
製造現場の品質が顧客満足度や納品タイミングなどの見える化されたノウハウは、営業などの業務現場でも、見積もりや価格調整や契約決定のために重要である。なぜなら、営業マンにとっては、顧客要求に応えるために、それらのノウハウデータをもとにして製造現場に介入した要求をだして、他社と差別化できる商品を提供できるかが重要となるからだ。そのために、営業マンは、さまざまな情報を収集したり、製造現場とのコミュニケーションを頻繁にとったりする必要がある。
一方で、製造現場にとっては、売り上げを上げるためだけや顧客の要求を鵜吞みにするような根拠がないような営業マンからの要求は、大きなストレスとなる場合もある。
このように、実際問題として、他社と差別化するために、企業価値や成長性などの目標達成をするには、製造現場による生産性や安全性および資本効率性と業務現場による収益性のバランスを、いかに見える化できるかが重要となる。
見える化と数字化の意味
経営会議では、部門横断的なバランスの見える化が会議資料に記載されており、経営陣は、見える化されたデータをもとに討議を行う。その資料には、業務現場における経営計画に沿った売上げや製造現場における生産能力、生産管理における生産時間や生産個数が数字で示されている。このように数字化することによって、経営計画の最適化や目標への達成具合を共有しやすくし、各現場の協調具合を見やすくなる。
経営会議に参加する機会のない現場では、それぞれの数字化の意味は理解できていないことが多い。製造現場では製品の本質をつくりこむ定性的なノウハウはデータや数字では示せないと考えているし、業務現場でも対人的な個別事象や主観的な解釈をもとにしたノウハウは、売り上げの数字には表すことは難しいと考えている。このように、それぞれの現場では、属人的なノウハウは数字化できないし、無理に数字化できないものがあるという前提があり、数字化することに消極的である。
実は、IoTの導入による数字化の意味は、今まで数字化できない状況を数字化することによって、「見える化」のレベルを細分化し、今までとらえにくかったノウハウをデータでとらえ、数字化しやすくすることにある。
たとえば、三菱電機では、社内の工場のIoT化において、SKML(Smart Manufacturing Kaizen Level)という評価指標によって、「見える化」を3段階に分けている。これによれば、データの管理対象も現場ごとにレベルに分けられており、IoT導入の観点が現場間で異なりながらも、最終的に目指すITの活用プロセスが分類され、ツールと収集するデータも紐づけられている。このような評価指標を活用することで、中小企業にとっても、現状のデータ利活用レベルを把握して、何を導入すれば、どのようなことが数字化可能なのかがとらえられる。

データ利活用の進展とSKMLの「見える化」レベルによるIoT関連技術の分類
とるべきデータを選ぶ
IoT導入は、全社横断的な数字化による共通言語を産むきっかけとなる。ただし、どうしても設置の順番として製造現場が中心となりがちだ。チームのリーダーもどうしても製造現場の課題の見える化に沿ったデータを収集することを考えることが多い。さらに、データを数字化して見える化・観える化・診える化する関連ツールやアプリケーションなどの製品がたくさんあるため、目標や解決したい課題をそれぞれの見える化レベルや管理レベルでユースケースを想定しなければ、ベンダーでさえ提案しにくい。
このような2つの大きな罠から逃れるために、見える化レベルa、管理レベル1で取得するデータは、どのように利活用していくかを見える化を詳細にして、とるべきデータを選ぶために、何を見える化していくかを全社横断的にモニタリングしてとらえつつ、議論をしてコントロールすることが大切であろう。
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